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患者のみなさまへ

腎(透析)センター

センター長 林 晃正

腎センタ-の概要

 わが国における透析導入患者数、維持透析患者数は年々増加の一途を辿り、様々な合併症を有する高齢患者や糖尿病性腎症患者が増加しております。また、腎移植ならびに腹膜透析患者数が極端に少なく、腎不全患者に対して腎代替療法選択の説明が十分に行われていない現状も問題となっています。腎疾患に対して、腎臓専門医による早期の適正な介入により腎臓病を治癒させ、たとえ進行性であってもその進行速度を減速させることで、腎代替療法導入を阻止あるいは遅延させることが最も重要な課題であることはいうまでもありません。一方で、透析導入後の患者QOLや生命予後を改善させるためには、適切な時期に適切な腎代替療法を選択・導入し、透析合併症の予防と治療を積極的に進めてゆくことも極めて重要です。たとえ末期腎不全に陥り、腎代替療法を必要とする状況であっても、腎移植や腹膜透析は高いQOLを維持し、社会復帰の可能性を高める腎代替療法であり、十分な説明と理解・納得にもとづいたshared decision makingによる腎代替療法選択が可能となるようなシステム作りが喫緊の課題と言えます。
 腎センターは2008年12月に「大阪市南部地域中核病院として腎疾患および諸疾患に合併する腎障害の総合的診療、ならびに様々な疾患に対する血液浄化療法を包括的に提供する」ことを目的に、腎臓・高血圧内科、泌尿器科、両病棟ならびに外来・透析室スタッフを中心に設立されましたが、当初は適切・安全・計画的な腎代替療法導入と地域の維持透析患者の合併症治療中の臨時透析の実施、腎移植患者や免疫・神経・消化器など様々な疾患に対する各種血液浄化療法の提供、さらには集中治療室等で発生する急性腎障害に対する急性血液浄化療法の施行などがその業務の中心でした。しかしながら2011年以降、「慢性腎臓病対策外来」の新設、「腎代替療法選択外来」の刷新、「腹膜透析準備外来」の新設など様々な取り組みを行っており(表1)、さらに2012年12月には人工透析室に隣接して腹膜透析外来2診、検査室、指導室、講義室が完成したことで、当科が目指す「腎疾患に対するトータルケア」が実践できる環境が整いつつあります。

表1 腎センタ-週間予定 表1

腎疾患・移植腎に対する早期介入

 近年、当センターと近隣医療機関との連携による「腎疾患の早期診断と早期治療」の重要性が地域に浸透しつつあり、その結果として腎疾患の早期診断に必須である腎生検数が顕著に増加しております。図1に示すように、自己腎と移植腎に対する腎生検総数はここ数年で約2倍となっており、2016年は200件に到達し、全国でも屈指の腎生検数となっています。移植腎の長期生着には拒絶反応や腎炎の再発あるいは新規腎炎の発症や薬剤性腎障害など移植腎に起こり得る様々な病態を早期診断することが極めて重要です。したがって移植腎生検の役割は非常に大きく、腎センターにおいて実施される移植腎生検数は近年増加傾向にあり、2020年は58件でした(図1)。また腎臓専門医が移植腎生検を含め腎移植後患者にかかわることで、腎移植後腎機能低下に合併する様々な病態への内科的介入が可能となり、移植腎のさらなる長期生着が可能となります。2011年以降は移植医(泌尿器科医)とともに腎臓専門医が腎移植後患者を定期フォローする機会も多くなっております。


図1
図1 過去10年間の腎生検実施数

慢性腎臓病対策外来

 慢性腎臓病は適切な治療と自己管理によりその進行を抑制することが可能ですが、最近では寛解すなわちその進行をほとんど停止させることも可能となっております。それには、降圧療法を含めた薬物療法と低蛋白食を含めた食事療法が重要となりますが、慢性腎臓病患者においては、同じように腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)が60ml/min/1.73㎡未満の場合であっても、原疾患や合併症によりその病態は様々であり、個々の患者に合った治療でなければ、逆に腎機能低下を加速させることにもなりかねません。それ故、個々の患者の病態にあった治療を指導・継続してゆく目的で、2011年12月より月1回の頻度で「慢性腎臓病対策外来」を開催しております。この外来は “透析導入阻止”を合言葉に、約2時間の枠の中で腎臓・高血圧内科医師ならびに看護師や栄養士による講義と個別指導さらには診察を行うもので、1回5組の患者とその家族が参加可能です(予約制)。1回5組に限定しているのは、患者個々の病態に応じた適切な個別指導を行うためですが、この外来は地域にもオープンとなっており、腎臓・高血圧外来に通院していない患者であっても参加が可能であり、地域医療連携室を通して予約可能なシステムとなっております(2021年度は諸事情により中止)。

腎代替療法選択への充実した支援

 腎機能(eGFR)が10ml/min/1.73㎡程度に低下した時点で、腎代替療法すなわち透析療法 (血液透析と腹膜透析)あるいは腎移植について考えておく機会が必要です。腎代替療法選択はその後の患者の生活の質、ライフスタイルに影響を与えるだけでなく、生命予後にも大きく影響するため、その選択には十分な時間をかける必要があります。「腎代替療法選択外来」では(表1)、月2回2時間の枠(第2、4水曜日15:00~)のなかで、専門看護師による血液透析、腹膜透析さらには腎移植の説明とDVDの視聴、さらには腎臓専門医による説明を行っております。
 患者によっても多少異なりますが、透析を始める時点で腎機能は0ではなく、5~10ml/min/1.73㎡程度残っています。これを残腎機能と呼び、その後の患者の生活に大きな影響を与えます。この残腎機能をできるだけ温存し、患者自身のライフスタイルに合わせた透析ができることなどから、透析療法は腹膜透析で開始するPD(腹膜透析)ファーストが重視されております。ただし、腹膜透析は血液透析に比べより自己管理を必要とするため、全ての患者にとって腹膜透析が最良の腎代替療法とは言えません。当科では腹膜透析のメリットを最大限に享受できそうな患者には、腹膜透析を第1選択として提案しております。さらに2012年に新設した「腹膜透析準備外来」では(表1)、腹膜透析を将来の腎代替療法として考慮中の患者に対して、具体的なイメージづくりのために、実際の手技体験や腹膜透析導入後の生活のシミュレーションなどを行っております。また、従来生体腎移植は、透析に導入された後に移植手術を受けることがほとんどでしたが、最近では透析に導入することなく移植手術を受ける「先行的腎移植(PEKT)」も増加しており、早くから移植医へ相談し(腎移植相談外来を受診)、準備を進めるようにしております。
腎代替療法選択外来」刷新や「腹膜透析準備外来」新設の結果、2012年以降腹膜透析やPEKTを選択する患者が顕著に増加しており、新規腎代替療法導入患者の15%前後が腹膜透析やPEKTを選択しております(図2)。

図2

各種疾患に対する血液浄化療法の提供

 当センターの主要な役割の1つである、維持透析患者の合併症治療の充実を図るため、2012年5月より透析室は月・水・金を2クールとし、維持透析患者の合併症治療の受け入れ枠を増やす体制を強化しました。その結果、人工透析室での透析施行件数は2012年以降顕著に増加し、2015年には4900件に達しており(図2)、合併症治療の受け入れ患者数も2017年には年間400人に達し、2020年には、418人と昨年と同様の数値を維持しました。特に冠動脈インターベンション、不整脈に対するカテーテルアブレーション、末梢血管に対するEVT、心臓/大血管手術に代表されるように循環器合併症が約40%を占めており、透析室の人員やベッド数さらには患者重症度を考えれば、すでにcapacityを超えた状態となっています。腎移植患者に対しては、特にABO不適合移植や巣状糸球体硬化症を原疾患とするレシピエント、さらには拒絶反応時などに血漿交換を実施しており、移植腎機能廃絶からの透析再導入も行っています。また、高度医療総合病院の特性を生かし、救命救急センターを始め急性期医療部門(ICU、CCU、SCU)での急性血液浄化療法や、自己免疫疾患・神経疾患・消化器疾患など腎疾患以外の疾病に対する血液浄化療法にも対応し、病棟で行う血液浄化療法も、2020年には年間603件と、600件前後を保っています。人工透析室には個人用透析装置5台、持続緩徐式血液浄化装置2台、血漿交換対応装置2台、顆粒球除去装置、エンドトキシン吸着装置、直接血液吸着装置、移動式RO装置2台などが装備されており、ありとあらゆる血液浄化法に対応可能となっております。