腫瘍センター(外来化学療法室)
はじめに
大阪急性期・総合医療センターでは、患者さんの生活の質(QOL)を重視する観点から、通院での治療を可能にする外来化学療法を積極的に行っています。
外来での治療は、不安もあるかと思いますが、安心して安全に通院治療を受けていただけるように医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどさまざまな職種が協力してサポートを行っています。外来化学療法室では、(1)がん治療成績の向上、(2)がん患者に安全で優しい外来医療の提供、(3)診療科間の化学療法レジメンの共有、(4)地域がん診療連携拠点病院としての情報発信、を目標として、外来化学療法室のより多くの利用を推進しています。
外来化学療法室の概要
当センターは、2008年4月に外来化学療法室を整備・開設し17年目となります。外来化学療法室には、専任看護師8名(がん化学療法看護認定看護師1名を含む)、薬剤師4名(院内がん専門薬剤師は病棟と合わせ5名在院)で構成され、昨年度は13診療科の外来化学療法を行っています。室内には長時間を要する抗がん剤治療でも快適に受けられるように、液晶テレビ付きのリクライニングチェアとベッドを現在31台設置しております。今後、47台まで増設できる設計になっております。また、それぞれカーテンで仕切られプライバシーが守られ、快適に治療を受けていただく環境づくりに配慮しています。
外来化学療法室内には、ミキシングルームが併設されており化学療法薬剤を調整する安全キャビネットを3台設置しています。調剤が安全かつスムーズに実施でき、シームレスな薬剤の投与開始が出来るようになっています。
外来化学療法の流れ
来院後の検査・各科での診察の結果、主治医がその日の化学療法の施行が可能と判断しましたら、南館2階の外来化学療法室へ移動していただきます。外来化学療法室では、その日の体調や前回治療から当日までの内服状況や副作用を確認します。調剤した薬剤が届き次第、治療が開始されます。薬剤の投与中には、副作用が出てないかモニタリングしながら、ご自宅での注意点や副作用マネジメントなど出来るだけ、治療中の副作用が軽減出来るようにアドバイスしております。
外来化学療法の実績
2023年(1-12月)の利用件数は、7,648件(一日平均29.7件)でした。2023年の年間利用件数は前年より増加傾向でした (グラフ参照)。主な利用は消化器外科、呼吸器内科、乳腺外科、消化器内科、婦人科、泌尿器科、血液・腫瘍内科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、歯科口腔外科、脳神経外科、腎臓高血圧内科の患者様が外来化学療法室を利用しています。また、がん以外の関節リウマチやクローン病などの自己免疫疾患に対する治療を要する患者様も外来化学療法室を利用していただいております。
日々進歩する薬剤に対応するために
化学療法に使用する薬剤は、日進月歩で開発されておりその種類や適応が目まぐるしく進化しております。その治療の重要な役割である薬物治療は従来のいわゆる抗がん剤以外にもホルモン剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤の普及もあわせ治療法が多岐にわたるようになりました。さらに、がんパネル検査の保険適応を受け遺伝子プロファイリングに基づく、個別化医療も進んでいます。これらの最新の治療に対応するため定期的にセミナーに参加し、専門知識のアップデートに努めております。また、通院治療を安全に行うには、保険調剤薬局との連携が欠かせないと考え定期的な病薬連携セミナーを実施しております。
安心して外来化学療法を受けていただくために
外来化学療法室では、副作用時の対処方法だけでなく、自宅で副作用が出た場合の相談や受診の窓口についてもお伝えします。当センターは、通院治療中であれば時間内・時間外問わずに診察出来る体制が整備されていますので、安心して外来化学療法が実施できます。
ケアチームによる取り組み
蓄積されたエビデンスだけでなく、自身の好みや価値観を考慮して治療を選択するシャアード・ディシジョン・メイキングという患者と医師のコミュケーションによる治療選択が、近年、提唱されております。患者の生活や好み、価値観にも寄り添い、(1)病状に合わせた、(2)体力に合わせた、(3)安全で有効な薬剤の選択と実施を行なって参りたいと思います。そのためにも、患者とご家族の病状や環境に応じた薬剤マネジメントをしつつ、これまでと同じような生活を送りながら行う通院治療を継続できるように、ケアチーム(医師、看護師、薬剤師、ケースワーカー、管理栄養士)一同が、情報を共有して取り組んで参りたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。