肝がん治療センター
特色
肝がんは、2000年代前半をピークとして、その後、緩やかに減少しつつありますが、それでも今なお、全国で毎年約3万人もの方が亡くなっています。肝がんは集学的治療を必要とする疾患であり、背景肝の予備能や肝がんの進行の程度によって、肝切除、焼灼療法、塞栓療法、全身化学療法などの治療法が選択されます。当院では、肝がん治療を担当する消化器内科、消化器外科、画像診断科が週1回開催しているキャンサーボードで患者様一人一人を検討し、最適な治療法を提供しています。以下に、それぞれの治療の概要をお示しします。
肝細胞がん
- 経皮的ラジオ波焼灼治療(RFA)
超音波診断装置で肝がんの位置を確認しつつ、電極針で腫瘍を穿刺し、針先端部分からラジオ波という電磁波を発生させ、肝がんを熱凝固する治療です。肝がんの大きさが3cm以内、数が3個以下の場合が適応となります。当院では人工胸腹水やfusion imagingを積極的に用いることによって安全かつ正確な治療を心掛けています。 - 肝切除術
肝硬変があまり進んでおらず、がんの他臓器への転移や血管への進展がない患者様で、経皮的ラジオ波焼灼治療が困難な場合に適応となります。当院では傷が小さく、患者様の負担の少ない腹腔鏡下肝切除術に力を入れています。 - 肝動脈(化学)塞栓療法(TA(C)E)
肝がんの数が多い場合に行われます。従来のリピオドールとゼラチン粒を用いたcTACEに加え、肝臓に負担の少ない薬剤溶出性の球状塞栓物質(DEB-TACE)も用いています。また、肝がんからの出血を止めたり、手術の前にがんを小さくしたりする目的で行われることもあります。 - 全身化学療法
肝予備能がChild-Pugh分類Aと良好で、肝がんが肺や骨、リンパ節に転移している場合や、肝臓の大きな血管に進展している場合に使われます。現在、分子標的治療薬であるソラフェニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブの単剤投与に加えて、免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブと分子標的治療薬であるベバシズマブの併用療法が保険承認となっています。副作用の出やすい薬ですので、当センターでは入院していただいて導入しています。 - 放射線照射療法
骨転移による痛みの緩和や門脈腫瘍栓・胆管腫瘍栓に対する治療だけなく5cm以下で転移のない肝細胞がんに対しても治療を行うことがあります。
肝内胆管がん
肝内転移、他臓器転移、遠隔リンパ節転移の有無を評価し、病期によって肝切除術あるいは全身化学療法を選択します。肝切除に際しては門脈塞栓術(PTPE)を先行する場合があります。
また、必要に応じて、経乳頭的あるいは経皮経肝的胆道ドレナージを施行します。
転移性肝がん
特に大腸癌では切除可能な肝転移巣に対して肝切除術を積極的に行っています。また、補助的にRFAや経皮的マイクロ波凝固治療(MWA)などの穿刺局所療法を行っています。
主要疾患
肝細胞がん
肝内胆管がん
転移性肝がんなど
主要検査
(造影)腹部超音波検査、(ダイナミック)CT、(造影)MRI、
PET-CT検査
腹部血管造影検査
エコーガイド下肝腫瘍狙撃生検など
診療実績(2020年)
外科的肝切除術:肝細胞がん14例(うち腹腔鏡手術6例)、肝内胆管がん2例
穿刺局所治療28例(経皮的ラジオ波焼灼治療(RFA)25例、経皮的マイクロ波凝固治療(MWA):3例)
経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法:65例(cTACE 57例、DEB-TACE 8例)
経カテーテル的肝動脈塞栓療法(bland-TAE):5例
経カテーテル的肝動注化学療法(TAI)18例
全身化学療法:肝細胞癌19例(ソラフェニブ6例、レゴラフェニブ4例、レンバチニブ6例、ラムシルマブ1例、アテゾリズマブ・ベバシズマブ2例)、肝内胆管がん5例
診療科からのお知らせ
肝がんは、進行するまで無症状であることがほとんどです。C型肝炎やB型肝炎と診断された方、飲酒量の多い方、肥満や糖尿病を持っている高齢の方は、肝がん発症の危険群です。これらの方は、肝がんの有無をチェックするため、定期的な検査を受けられることを強くお勧めします。また、C型肝炎は内服加療によって9割以上の方でウイルス排除が期待できます。肝がんの検査ならびに肝炎の治療の窓口は、当院消化器内科が担当しています。どうぞご相談ください。