生殖医療センター
センター長 森重 健一郎
生殖医療センターの概要
大阪急性期・総合医療センターの中央館5階西におきまして、「生殖医療センター」を2018年10月1日にオープンしました。
一部の処置を除いて、一連の診察は同場所で行います。総合病院内にある強みを生かして周産期・泌尿器科はもちろんのこと、他科とも連携の上、合併症(悪性腫瘍を含む)を有する患者さんも積極的に診療させていただきます。
※当センターでの不妊治療は年齢制限を設けており、45歳未満の女性を治療対象としています。
※お子様は5階に上がることができません。託児スタッフはいませんので、事前に預け先を確保いただくか、1人で大丈夫なお子様は診察終了まで1階でお待ちいただくことになります。
生殖医療センターの紹介
2018年に生殖医療センターが開設されて6年が経過しました。
2022年4月に人工授精と体外受精が保険適用となり、患者さんにとっては経済的な負担が大きく軽減されることになりました。皆様のご支援のおかげで、当センターは開設以来着実に受診患者数が増加してきています。
診療内容については、一般的な不妊検査及びタイミング治療から人工授精・体外受精まで幅広い不妊治療を実施しています。2022年度からは卵管閉塞に対する卵管鏡下卵管形成術、胚のタイムラプス培養を導入し、より不妊治療の成功率の向上に取り組んでいます。
特に当センターの場合、様々な合併症があっても、あるいはがんになっても子供を持ちたいという願いに応え、院内の診療科と緊密に連携をとりながら総合病院ならではの不妊治療を提供しています。子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患が不妊の原因である患者さんには、腹腔鏡手術療法を組み合わせて治療を行っています。また自己免疫性疾患、糖尿病など合併症を有する妊娠希望患者さんには専門診療科との連携のもとで不妊治療を行っています。男性不妊についても泌尿器科との連携により十分な診療体制をとっています。
また妊娠成立後は、合併症の状況に応じて、分娩に至るまで一貫して当院で診療することが可能です。
がん治療の治癒率の上昇に伴って最近話題になっているがん生殖医療、すなわち、若い世代のがん患者に対する妊孕性温存についての相談を行っています。当センターでがん治療を受けられる患者さんだけではなく、他のがん診療施設の患者さんにもカウンセリングを行い、必要に応じて未受精卵子、胚、精子、精巣内精子を凍結保存できる体制を整えています。
生殖医療センターは、通常の産科・婦人科外来とは離れた場所で診療を行える体制を整えています。カップル単位で来院いただき、静かな環境でストレスなく診療・相談に対応できるようになっています。胚培養士の辻優大さんは「受精卵についてわからないことがあれば何でも聞いて不安を解消してください。」と患者さんに向き合っています。スタッフ一同ワンチームで不妊に悩む患者を支え続けたいと日夜努力しています。
患者さんとは丁寧な説明を通じて最適な治療法を決定します。ご紹介は生殖医療外来へお願い致します。
〈生殖医療〉2024年度実績
人工授精 143例
採卵 144例
胚移植 1430例
胚移植当たり妊娠率 33%
がん生殖医療
カウンセリング実施 10例
未受精卵凍結 1例
胚凍結 1例
精子凍結 4例
診療について
※初診時検査は保険診療で行っています。
不妊治療・生殖補助医療
一般不妊治療(タイミング療法及び人工授精)
まずは、病気の有無や生活歴についての問診をさせていただき、妊娠に関わる臓器、ホルモンや感染症についての検査を血液や超音波検査、子宮卵管造影によって行います。排卵・受精・着床のどこに問題が生じているかを探索していくのですが、一度に全部を検査できるわけではありませんので、同時進行でタイミング療法や人工授精等を行います。必要に応じて卵管鏡、子宮鏡、腹腔鏡手術等も行います。もし、当センターの受診までに不妊治療や検査を行ったことがあれば、わかる範囲で結構ですのでお伺いできればと思います。
手術による妊孕性(にんようせい)改善
子宮内膜症、子宮粘膜下筋腫などに対して腹腔鏡手術や子宮鏡手術を行うことによって妊孕性を改善できることがあります。また、卵管閉塞に対しては卵管鏡を行うことも可能です。
体外受精・胚移植
体外受精は、①卵巣刺激→②採卵→③体外受精→④胚培養→⑤胚移植→⑥黄体補充の順に行います。
①~⑥のそれぞれにおいて、いくつかの方法がありますので、患者さんにとって最適な方法を探りながら決定していきます。体外受精(cIVF)は体外に取り出した卵子と、射精により体外に取り出した精子を、培養液中で受精させ培養を行います。続いて、発育した受精卵を子宮内に戻す方法が、胚移植になります。なお、治療を進めるにあたり合併症を発症した際には、婦人科的管理を当センターで行うことも可能です。
顕微授精
顕微授精(ICSI)は、卵子の細胞質内に精子を直接注入する方法です(下図参照)。精子濃度が低いといった男性因子による不妊症や、なんらかの理由が原因で受精が認められない方に対する治療法になります。当センターの特徴の一つとして、ICSIを行う全例を対象に、Piezo-ICSIを実施しております。簡潔にご説明しますと、特定の機器(Piezo)を駆使することにより、ICSIの際に卵子へ与えるダメージを減らす方法です。本法は、近年の生殖補助医療の現場で、その効果が実証されています。
精巣内精子回収術(顕微鏡下含む)
精液検査の結果等で男性不妊と考えられる場合は、男性に泌尿器科への受診をしていただきます。精子を作る機能が正常でも運ぶ管がつまっている場合は、精巣内精子回収術(TESE)によって、精巣から精子をみつけることができます。また、男性不妊の中には、従来では妊娠は不可能と考えられていた無精子症や乏精子症等がありますが、そのような場合でも、精巣等から1個でも精子を回収することができれば、ICSI(顕微授精)を用いることにより妊娠できる可能性があります。
悪性腫瘍に対する妊孕性(にんようせい)温存処置
当センターでは胚を凍結保存することが可能です。もちろん対象症例は、紹介元の主治医と相談しながら、慎重に可能かどうかを検討し対応します。当センターでの対応が困難な場合でも、情報提供はさせていただきますので、悩まれる方は一度ご受診いただければと思います。
当院は大阪府早発卵巣不全患者等妊よう性温存治療助成試行事業登録医療機関です。
お問合せは 生殖医療センター
06-6692-0311(直通)
06-6692-1201(代表)
月~金 9時~17時15分