消化器内科
特色
消化管
消化管分野では最新の機器を装備した内視鏡センターにおいて、食道、胃、十二指腸、大腸に精通した消化器内視鏡スタッフにより精度の高い内視鏡診断、治療を行っています。内視鏡検査は通常の白色光観察のみならず、色素観察や狭帯域光(Narrow Band Imaging; NBI)を用いた観察により、癌の早期発見、正確な病変範囲診断に努めています。また、病変の深達度(深さ)や粘膜下腫瘍の局在を調べる場合には超音波内視鏡を用いて病変の深達度、局在診断を行います。
正確な術前診断ののち、転移のリスクがないと判断された腫瘍性病変に対しては、病変ごとに適切な内視鏡治療を行います。早期の食道癌、胃癌、大腸癌、あるいは側方へ広く発育したポリープなどに対しては一括での病変の切除が望ましく、内視鏡先端より突出させた電気メスを用いて病変をくり抜くように切除する、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法を用いて切除します。これにより従来では外科的切除となっていた病変も内視鏡的に根治させることが可能となりました。一方、大腸癌の芽となりうる大腸ポリープなどの良性腫瘍に対しては、スネアを用いて切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行い、ポリープ切除による大腸癌の予防に努めています。当科では短い入院期間での内視鏡治療が可能で、特殊な場合を除き、大腸のEMRは1泊2日~2泊3日、食道、胃のESDは3泊4日、大腸のESDは4泊5日という短期の入院で治療できることも特長の一つです。
当科ではESDの技術を他臓器腫瘍の治療にも応用しており、耳鼻科領域である下咽頭癌も、早期の段階であれば全身麻酔、喉頭展開による麻酔科、耳鼻科のバックアップの下、ESDで根治切除することが可能となりました。また、胃の筋原性腫瘍(胃の筋層から発生する腫瘍)に対しては、消化器外科との協力により腹腔鏡内視鏡共同手術(Laparoscopic Endoscopic Cooperative Surgery; LECS)を行い、病変の切除範囲を最小限にすることで胃の機能温存を期待できるようになりました。
また、当センターの特徴の一つとして、抗血栓剤やステロイドなどの内服、人工血液透析を導入されているなど、内視鏡治療に際して偶発症リスクの高い患者様が比較的多いことが挙げられます。われわれのグループでは臨床試験を通じ、術後出血をはじめとした内視鏡治療の偶発症を少しでも減らすための取り組みも行っており、今後の内視鏡治療の質向上に役立てたいと考えています。
その他、良性疾患では、潰瘍性大腸炎、クローン病などの薬物治療から、大腸憩室出血、胃十二指腸潰瘍、食道胃静脈瘤などの緊急止血術まで、消化管疾患の治療に広く対応しています。
肝臓
肝細胞がんの最大の危険因子であるC型肝炎は、経口内服薬であるDAA: Directly Acting Agents(直接作用型抗ウイルス剤)の登場により副作用の多いインターフェロン注射を用いることなく8~12週間の治療期間により100%に近い治癒率が得られるようになりました。対象疾患は慢性肝炎ならびに肝硬変であり、副作用が軽微なためインターフェロン治療を体力的、年齢的に受けられなかった患者さんも治療可能となっています。公的な医療費助成を利用することにより治療費の負担が大きく軽減され、まさに“C型肝炎は治る時代“となりました。
一方でB型肝炎ウイルスは、無症候性キャリア、非活動性キャリア、急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんといった様々な病状を呈します。B型肝炎ウイルスは、一旦慢性化しますと体の中から完全にウイルスを排除することが困難です。肝機能障害を伴うウイルス量の多い方は、適切な抗ウイルス薬の投与により肝硬変への進行を抑えることが必要です。当科ではB型肝炎ウイルスキャリアの方には、定期的な検査を受けることをおすすめし、治療が必要な時に適切に開始できるよう努めています。
C型肝炎が治る時代になるにつれて肝がんの危険因子としての割合を増しているのが生活習慣病です。健康診断でみつかる肝機能障害の大部分は肝臓における生活習慣病である脂肪肝です。この飲酒と関係の無い生活習慣による脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。この非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の一部が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれ、知らないうちに肝硬変や肝臓がんとなります。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療は他の生活習慣病と同様に食事療法と運動療法が大切です。糖尿病、肥満など生活習慣病患者さんの日常診療に定期的な超音波検査を行うことおすすめしています。
当科肝疾患外来では、C型肝炎をはじめとする肝臓病患者様に最新の医療を提供できる体制を整えております。更に、肝臓がん発生の危険性の高い方に対しては、定期的に超音波検査やCT検査を行い、肝臓がんの早期発見に努めています。肝臓がんに対しては手術、ラジオ波熱凝固療法、肝動脈化学塞栓術あるいは抗がん剤治療といった治療選択肢からがんや肝障害の状態を総合的にみて治療法を選んでいます。当科では特に安全で苦痛の少ない効果的なラジオ波治療を行えるよう工夫しており、また、抗がん剤治療に積極的に取り組んでいます。
胆膵
高齢化・生活習慣の変化などに伴い、膵臓がん、胆道がんは増加しております。診断は、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)による細胞診・組織診や、超音波内視鏡検査(EUS)による細胞診・組織診によって行います。治療に関しては、消化器外科・画像診断科と連携して方針を決定し、手術困難な場合は、抗がん剤治療を行っております。現在においても膵臓、胆道のがんは経過が不良ですが、新たな抗がん剤が使用可能になり、治療成績は向上しつつあります。
また、胆膵系の腫瘍・総胆管結石などは胆管閉塞を起こし、黄疸を発症することがあります。その際はERCPにて詰まっている結石を取り除いたり、胆管にステントという管を留置して黄疸を改善させる治療を行います。重篤な感染を起こした場合(急性閉塞性化膿性胆管炎)などに対しては、緊急に対応しています。
術後胃など困難な病態に対しては、ダブルバルーン小腸内視鏡を使用しての治療(DB-ERCP)で対応しております。
主要疾患
消化管疾患
表在型食道がん、食道バレット腺がん、早期胃がん、胃腺腫、早期大腸がん、大腸ポリープ(側方発育型腫瘍含む)、早期十二指腸がん・腺腫、表在型下咽頭がん、Neuroendocrine tumor (NET)※1(胃、十二指腸、大腸)、Gastrointestinal stromal tumor (GIST)、その他の粘膜下腫瘍、消化性潰瘍、小腸出血、小腸腫瘍、クローン病、潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎、大腸憩室出血、腸閉塞、胃食道静脈瘤など
※1. 以前のカルチノイド腫瘍
肝疾患
急性肝炎、B型・C型慢性肝炎ならびに肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肝臓がんなど。
胆膵疾患
総胆管結石、胆管炎、胆嚢炎、急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎、膵がん、胆管がん、胆のうがん、のう胞性膵腫瘍など。
主要検査
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、大腸内視鏡検査、小腸内視鏡検査(DBE)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、腹部超音波検査、造影超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査、腹部血管造影検査、食道生検、胃生検、小腸生検、大腸生検、肝生検、胆管生検、胆汁細胞診、膵管生検、膵液細胞診、EUS下穿刺吸引術
診療実績
【内視鏡治療】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的止血術(高周波、クリッピング、エタノール注入、アルゴンプラズマレーザー(APC))
内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)ならびに結紮術(EVL)
内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)
内視鏡的総胆管結石除去術
内視鏡的胆管ステント留置術ならびに内視鏡的膵管ステント留置術
内視鏡的消化管狭窄拡張術ならびにステント留置術
内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
【消化器がんの化学療法】
肝がん、膵がん、胆道がんに対する全身化学療法
【エコーによる経皮的治療】
経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)
経皮的エタノール注入療法(PEI)
肝のう胞・肝膿瘍ドレナージ術
【画像診断科治療】
経カテーテル的肝動脈(化学)塞栓療法(TA(C)E)
経カテーテル的肝動注化学療法(TAI)
【肝がんの予防】
B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法(核酸アナログ製剤、ペグインターフェロン)
C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法(DAA(直接作用型抗ウイルス剤))
学会認定
日本内科学会認定教育病院
日本消化器病学会認定施設
日本肝臓学会認定施設
日本消化器内視鏡学会認定指導施設
日本胆道学会指導施設
スタッフ
写真 | 職名 | 医師名 | 専門分野 | 学会認定など |
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主任 部長 |
藥師神 崇行 (やくしじん たかゆき) |
消化器病 (特にウイルス肝炎の治療、 肝癌の予防・治療) |
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部長兼 内視鏡 センター長 |
井上 拓也 (いのうえ たくや) |
消化器病 |
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副部長 | 俵 誠一 (たわら せいいち) |
消化器病全般 |
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副部長 |
川井 翔一朗 |
消化管 (IBD、消化管癌 の治療) |
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副部長 センター長 |
山井 琢陽 (やまい たくお) |
肝胆膵疾患 (特に胆膵疾患の 内視鏡診断、治療、 化学療法) 消化器病 |
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医長 | 清水 健史 (しみず たけし) |
消化器病全般 |
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診療 主任 |
清田 良介 |
消化器病全般 |
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診療 主任 |
田口 春香 |
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医員 |
宮﨑 哲郎 |
消化器病全般 | ||
医員 |
近江 舞 |
消化器病全般 | ||
医員 |
関谷 圭泰 |
消化器病全般 | ||
医員 |
川田 沙恵 |
消化器病全般 |
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医員 |
中村 一輝 |
消化器病全般 | ||
医員 |
井戸田 陽奈 |
消化器病全般 |
診療科からのお知らせ
苦痛のない検査を目指して(鎮静剤使用をご希望の方へ)
当院では、内視鏡治療の際には鎮静剤/鎮痛剤を使用し、苦痛のない治療を目指しています。通常の内視鏡検査でもご希望があれば鎮静剤を使用し、少しでも楽に検査を受けて頂くことが可能です。以前に内視鏡検査で苦しい経験をされた方や喉の反射の強い方にお勧めします。鎮静剤を使用する場合は、検査開始から終了まで血圧・脈拍・血中酸素飽和度をモニターし、安全には十分配慮しています。検査後しばらくは眠気が続きますので2~3時間休んでから帰って頂きますが、そのための回復室も用意しています。なお車・バイク・自転車等での来院はご遠慮下さい。
専門的、機能的、効率的で患者様の利便性のよい診療を提供するためかかりつけである地域医療機関と連携して診療を行っています。そのため初診時にはできるだけ地域の医療機関あるいはそれまでかかっておられた医療機関から当院消化器内科宛の紹介状を持って受診されるようお願いいたします。
当科では各学会が根拠に基づいて作成したガイドライン等に準拠した専門性の高い標準的治療を行っておりますが、新しい薬剤や治療などの開発を目指した臨床試験や当院倫理委員会で承認された先進医療など、より有効性の期待される新しい治療も提供していきたいと考えております。院内ホームページや院内の案内などの情報をご参照下さい。
臨床試験
消化管
Cold snare polypectomyにて摘除された大腸癌の臨床経過に関する多施設共同後ろ向きコホート研究
高齢者における早期大腸腺癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の長期成績:多施設共同後ろ向きコホート研究
脂質異常症を有する炎症性腸疾患(IBD)患者に対するコレスチミドの安全性と有用性:多施設共同前向き観察研究
炎症性腸疾患の内視鏡的重症度評価における血清LRGの有用性に関する多施設前向き観察研究
ステロイド依存性・抵抗性の炎症性腸疾患に対する薬剤選択に関する多施設後ろ向き観察研究(OGF1809)
胆膵
背景膵に嚢胞を伴う膵癌における経過観察間隔と予後の解析
急性胆嚢炎に対する緊急・準緊急胆嚢摘出術非施行症例の臨床経過についての検討
胆汁漏に対する経乳頭的ドレナージの有用性に関する検討
播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した急性膵炎に対するトロンボモデュリンアルファの有用性
内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD)における有効性と安全性の検討
肝
肝性腹水に対するトルバプタン導入症例の多施設共同前向き研究
B型慢性肝疾患患者における免疫細胞応答の解明
C型肝炎ウイルスに対する直接作用型抗ウイルス薬による治療症例の臨床経過についての検討
C型慢性肝疾患患者の予後に関する検討
C型肝炎ウイルスに対する直接作用型抗ウイルス薬による治療症例の臨床経過についての検討
肝臓病の情報提供
肝臓病は自覚症状が乏しく、自覚症状が出てからでは手遅れになるケースが多いため、血液検査や画像検査の結果を正しく理解して、自覚症状がない時から医療機関を受診することが大切です。
そのため当院では消化器内科スタッフをはじめ、看護師・薬剤師・栄養士が協力して、肝臓病の患者さんを対象とした情報提供を心掛けています。肝臓病教室は年2回開催しておりどなたにでもご参加いただけます(日程等の詳細はこちら)。またタイムリーな情報を紙面で提供するための情報誌「にじいろ」の作成・配布も行っております(詳細およびダウンロードは以下より)
リンク先
リンク名称 | URL |
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消化器内視鏡センター | https://www.gh.opho.jp/patient/17/4/5.html |
肝がん治療センター | https://www.gh.opho.jp/news/51.html |