泌尿器科
診療内容
腎臓がん・腎盂尿管がん・膀胱がん・前立腺がんなどの悪性腫瘍、尿路結石症、腎移植、男性不妊症、前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁、副腎や副甲状腺といった内分泌疾患、尿路性器外傷、小児泌尿器科など泌尿器科が扱う診療をほぼ網羅しています。
科の特色
当センターはがん診療連携拠点病院・日本がん治療認定医機構認定研修施設に指定されていることから、泌尿器科も悪性疾患が多いことが特徴ではありますが、良性悪性を問わず、幅広い疾患に対応できる診療体制を整えています。
(1)外来診療
- 当センターは地域医療支援病院でもあり、患者さんに身近な地域で高度な医療が提供されるように努めています。
- クリニックや診療所、他の病院と機能分化・連携をとることによって患者さんのニーズに応じた医療を目指しています。そのためにも、診療情報提供書を必ずご持参下さい。
(2)外科的治療
- ロボット支援手術、腹腔鏡手術などの低侵襲な治療を積極的に行なっています。
- 2012年より手術支援ロボットを導入し500例以上のロボット支援手術を行っています。現在は国内最新バージョンである「da Vinci Xi」を使用しています。
- 前立腺肥大症や尿路結石に対するホルミウムレーザーを用いた手術や、精索静脈瘤や男性不妊症に対するマイクロサージェリーといった最先端手術も行っています。
- 1984年から腎移植を行っている実績ある腎移植施設でもあります。近年では年間約20例の腎移植を行っています。
(3)入院日数
- 術中・術後の合併症を減らし、診療密度を上げ入院日数を短くするように努めています。
- 入院期間の目安ですが前立腺生検2日、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)5日、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術9日、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術7日前後となっています。
(4)手術待機日数
- スピーディーかつ正確な手術を行うことで、できるだけ手術待ち日数が短くなるように努めています。
- 手術の種類にもよりますが、現在の待ち日数は2週間から2ヶ月です。
病気でお困りの患者さん皆様に安心・安全な高度医療をお届けできるように、スタッフ一同たえまない努力を続けています。いつでも気軽にご相談ください。
最近の治療のトピックス
膀胱がんのロボット手術
筋層浸潤膀胱がんの標準的治療は膀胱全摘除術です。開腹手術は、出血量や合併症が比較的多く侵襲性の高い術式でした。当科では、2014年から症例を選択して低侵襲手術である腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)を導入しました。2018年4月にロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(RARC)が保険適用されたため10月からロボット手術を開始しました。LRCとRARCは、開腹手術に比べて創が小さく術後の疼痛の軽減、出血量の低下、合併症発生率の低下、入院期間の短縮等のメリットがあります。
もう一つのRARCのメリットは、尿路変更です。膀胱全摘後には新しい尿のとおりみちを作成する必要があります。LRCでも、小腸を使用した回腸導管や回腸新膀胱は、腸管の切離と吻合、腸管と尿管の吻合という複雑な過程があるため体外で行ってきました。体腔内で行えば、尿管の剥離範囲が少なく腸管を外気に接触させないため腸管浮腫を軽減でき術後の回復が早いと考えられています。ロボット手術は縫合操作が容易なため、体腔内での操作性にすぐれています。2020年から完全体腔内での回腸導管造設術を、2021年から完全体腔内での回腸新膀胱作成を開始しています。
がん遺伝子パネル検査と前立腺癌治療
がんは、主に遺伝子に傷がつくことで発生します。がん遺伝子パネル検査では、癌細胞に起きている遺伝子の変化を調べることができます。ゲノム解析によって網羅的に調べ、がんと関連する多数の遺伝子の状態を確認することを通して、がんの特徴を調べ、適切な薬剤や治療法、参加できる可能性がある臨床試験・治験の有無を検討し、その結果をお伝えする検査です。もちろん、現時点では遺伝子の変異が見つかっても有効な薬がないこともあります。
2020年12月に、BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者に対してオラパリブが使用可能となりました。前立腺がんの薬物治療はたくさんありますが、また一つ有効な治療法が出現したと考えられます。
当センターは、がんゲノム医療連携病院に指定されています。上記前立腺がんも含めほかのがんに対しても遺伝子パネル検査を積極的に行っています。
珊瑚状結石に対する経皮的腎砕石術
腎臓の腎盂と腎杯に連続するような大きな結石をその形から珊瑚状結石とよびます。珊瑚状結石に対する治療の一つが経皮的腎砕石術(PNL)です。背中から腎臓に直接穿刺を行い、内視鏡を挿入するルート(トラクト)を作ります。内視鏡の細径化によりトラクトも以前の約半分くらいの大きさで手術が可能になりました。トラクトの細径化によって合併症を減らし、入院期間を短縮することができると報告されており、当科でも細径腎盂鏡を用いたPNL(mini-PNL)を行っています。
Mini-PNLでは、出血の軽減に有用性が認められている一方で、視野不良や手術時間の延長が問題点とされていますが、当科では、持続吸引による灌流が可能であり、腎盂内圧の上昇を防ぎつつ良好な視界を保つことができる Clear Petra System®︎を使用しています。吸引圧調節孔をふさぎながら、腎盂鏡をマーカーまで引き抜くことで、大きな砕石片をボトルに回収することができるという利点もあります。
骨盤外傷後の尿道狭窄に対する尿道形成術
当院は高度救命救急センターの認定を受けており、多数の外傷の患者さんが搬送されてきます。交通外傷や労働作業中の事故、高所からの転落による骨盤骨折による後部尿道外傷の患者さんも受診されます。尿道が断裂して尿が出ない方には、一時的に膀胱瘻(下腹部の皮膚から直接膀胱にカテーテルをいれる)を留置します。その後、尿道の狭窄部位の評価を行い、受傷部位の安静を保ったあと(約3か月)尿道形成術を行います。
骨盤骨折に伴う後部尿道断裂に対する尿道形成術は泌尿器科領域の再建術の中で最も難度の高い手技の一つとされています。
当科では2015年3月から外傷性尿道狭窄に対し尿道再建(経会陰的に尿道端々吻合)術を行っていま。これまで6例に施行し、1年以上の経過で全例再狭窄はありません。他の救命救急センターや他施設の泌尿器科からの紹介も受け付けています。
各疾患の治療方針
(1) 腎がん
1-1.転移がない場合
1)腫瘍の大きさが4cm以下のとき
- ロボットを用いた腎温存手術が第一選択となります。
- 腎がんに対するロボット手術は⇨詳しくはこちら
2)腫瘍の大きさが4〜7cmのとき
- ロボットを用いた腎温存手術、困難な場合には腹腔鏡下根治的腎摘除術を行います。
3)腫瘍の大きさが7cmを超えるとき
- 腹腔鏡下または開腹手術による根治的腎摘除術を行います。
1-2.転移がある場合
- 全身状態が良好で転移病変が少量の場合は腎摘除術を行います。
- リスク評価でハイリスクのとき、手術により摘除不能なとき、転移病変の腫瘍量が多いときなどの場合には分子標的薬またはがん免疫療法による全身療法を行います。
- 国際的な腎がんのリスク分類によってがん免疫療法薬、分子標的薬の種類を選択しています。
(2) 腎盂尿管がん
2-1.転移がない場合
- 腹腔鏡下腎尿管全摘術を行います。進行がんの場合は開腹手術で行うこともあります。
- 進行している場合は抗がん剤治療を行ってから手術することもあります。
- 病理組織診断の結果によっては術後に抗がん剤治療を行います。
2-2.転移がある場合
- 抗がん剤治療を行います。
(3) 膀胱がん
1-1.原発性上皮内がん
- 初発の方にはBCGという薬を膀胱内に注入する治療を行います。
- 再発した方にはBCG膀胱内注入療法は原則2コースまでとし、①膀胱全摘除術、②抗がん剤膀胱内注入療法を検討します。
1-2.筋層非浸潤がん
- 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行い、テラルビシンという抗がん剤を術後すぐに膀胱内に注入します。
- 病理組織診断の結果によって再度同じ手術や追加治療が必要となる場合もあります。
1-3.筋層浸潤がん
- 切除可能な場合は膀胱全摘術を行います。可能な限りロボット手術で行います。
- 回腸導管、代用膀胱などの尿路変向術もロボット手術で行っています。
- 切除不能な場合や転移がある場合は抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療で切除可能となった場合はロボット手術を行うこともあります。
(4) 前立腺癌
- がんの状態によってロボット手術、放射線治療、内分泌療法、監視療法といった治療法があります。
- 切除可能な場合で、期待余命が10年以上であれば、基本的にはロボット手術を勧めています。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術の詳細は⇨詳しくはこちら
- 当科では前立腺の外にがんが浸潤している場合でも、ロボット手術による拡大切除を行い根治を目指しています。
- 切除可能ですが手術困難な方には、放射線治療または内分泌療法を考慮します。
- 切除不能な場合には内分泌療法を行います。
- ホルモン抵抗性前立腺がんとなってしまった場合は新規内分泌治療薬や抗がん剤治療、ラジウム内用治療などを行います。
(5) 腎移植
- 当科では毎年約20例近くの腎臓移植を行っております。
詳しくはこちらをご覧ください。 - なお、腎臓移植についての相談、ご紹介は毎週水曜日(午後)の腎移植相談外来で行っております。
完全予約制となっておりますので、当センターの泌尿器科外来へお問い合わせください。
泌尿器科外来 06-6692-1201(内線2240)
進行中の臨床試験
- 移植腎組織検体からのドナーHLAタイピング方法についての検討
- 腎移植患者におけるDSAモニタリングの至適時期および無症候性抗体関連型拒絶反応への治療介入効果についての検討
- 腎移植患者の予後に関する観察研究
- 生体腎移植後ドナーの残存腎機能および長期予後に関する検討
- ロボット支援前立腺全摘術後の年齢階層別下部尿路症状に関する検討
- ハイリスク予後因子を有する内分泌療法感受性前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法・アビラテロン酢酸エステル・ステロイド併用療法またはアンドロゲン除去療法・ビカルタミド併用療法のランダム化前向き臨床試験
- 表在性膀胱癌に対する抗がん剤維持投与による再発予防効果の多施設共同観察研究
- 去勢抵抗性前立腺癌患者における抗アンドロゲン剤交替療法後のエンザルタミドの臨床効果と安全性に関する前向き観察研究
- 上部尿路上皮癌の予後を規定する分子マーカーの探索
- 前立腺がん患者の診断時背景因子と初期治療および治療経過に関する実態調査研究
- 泌尿器癌領域における免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連副作用と予後との関連性の検討
診療実績
令和4年度の外来新患者数・入院患者数・総手術件数は各1,310人・1,218人・656件となっています。尚、平均在院日数は9.1日でした。
- 尿路性器癌:手術療法・放射線療法・化学療法・内分泌療法・免疫療法等種々の治療法を組み合わせた集学的治療による完全治癒を目指しています。また、低侵襲治療にも重点をおき、鏡視(腹腔鏡・後腹膜鏡)下手術を積極的に行っています。
令和4年度におけるロボット手術件数は、腎癌23件、腎盂・尿管癌19件、前立腺癌75件(全摘除術)、膀胱癌20件でした。 - 腎移植:昭和59年5月より生体腎移植、献腎移植を併せて計497例行っています。関西トップクラスの症例数を誇っています。令和4年度は15件でした。また治療成績も生存率、生着率ともに全国的にみて優れた成績を挙げており、非常に高い評価を受けています。血液型不適合腎移植、夫婦間移植、小児腎移植、二次移植にも積極的に取り組み、良好な成績を上げています。低侵襲治療の観点から、平成15年以降は腎提供者腎採取術を腹腔鏡下に行っています。
- その他の慢性腎不全関係疾患:慢性腎不全に続発する二次性上皮小体機能亢進症に対しての上皮小体亜全摘除術も年間数例程度施行しています。
- 尿路結石症:自然排石困難な上部尿路(腎・尿管)結石に対して体外衝撃波砕石術(ESWL:年間約40例)またはレーザーを利用した経尿道的砕石術や経皮的腎砕石術を行っています。ESWLは外来で行っています。膀胱結石はリソクラストで砕石します。尿路結石の重要な原因疾患の1つである原発性上皮小体機能亢進症に対する手術も行っています。
学会認定
日本泌尿器科学会専門医教育施設
スタッフ
写真 | 職名 | 医師名 | 専門分野 | 学会認定など |
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主任 部長 |
高尾 徹也 (たかお てつや) |
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副部長 | 蔦原 宏一 (つたはら こういち) |
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副部長 |
小林 泰之 |
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医長 |
川村 正隆 |
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医長 |
中野 剛佑 |
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医員 |
脇田 哲平 |
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医員 |
森 駿介 |
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医員 |
瀬川 晃平 |
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外来診療のご案内
腎移植の相談について
腎移植についての相談および腎移植相談外来の予約につきましては完全予約制となっております。
当センターの泌尿器科外来へお問い合わせください。
泌尿器科外来 06-6692-1201(内線2240)
診療科からのお知らせ
当科では、さまざまな疾患における治療の向上を目的として、さまざまな臨床研究に取り組んでおります。ご理解ご協力のほどお願いいたします。