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患者のみなさまへ

顔面けいれん

顔面けいれんとは

顔面けいれんは顔の半分が自分の意志とは関係なくピクピクと痙攣する疾患です。
典型的には、片側の目の周り(眼輪筋)から始まり、半年とか1年ぐらいの時間経過で徐々に下方に伸展して口元(口輪筋)まで広がるようになります。重症になると、けいれんしている時間も長くなり、1日中ピクピクして目が開けられず、口元はひきつるように引っ張られ、顔が歪んでくることもあります。人前での緊張、ストレス、疲れ、強い閉眼運動、発語などで誘発される事が多いのが特徴です。多くの場合、睡眠中もけいれんは出現します。

顔面けいれんの原因(神経血管圧迫症候群)

脳の血管(主に動脈)が、顔面神経を圧迫することが原因となる神経血管圧迫症候群の一つです。顔面神経が脳幹から出る部分(REZ)に動脈がぶつかって神経を圧迫することで、動脈の拍動が神経を刺激して顔面の筋肉が不随意に収縮して顔面けいれんを起こします。
従って、この原因で起こる顔面けいれんは必ず圧迫をされている側のみの片側性です。
ごく稀に腫瘍等が顔面神経を圧迫して発症することもあります。

顔面けいれんの診断と検査

特徴的な片側の顔面のけいれんの症状を呈している患者さんで、MRI検査を行い、顔面神経が脳幹から出る部分に血管が接している事が画像にて確認できれば、診断はほぼ確実と考えます。

治療法

治療法には 
1. 薬物治療 2. 神経ブロック 3. 手術
の3つの方法がありますが、根治的な治療は原因を解決する手術治療のみです。

1. 薬物治療 2. ボトックス療法 3. 外科的治療
1. 薬物治療

内服薬としてクロナゼパムやカルバマゼピン、ガバペンチンなどの抗てんかん薬が用いられますが、副作用も少なくなく、多くの場合、満足のいく結果が得られません。

2. ボトックス療法(神経ブロック)

ボツリヌス毒という神経毒をけいれんしている顔面の筋肉に直接注射し顔面の筋肉を麻痺させる事で顔面のけいれんを抑える治療法です。簡便で一時的には有効な治療ですが、ある期間経つと効果が薄れ、またけいれんが始まりますので、根本的な治療ではありません(対症療法)。概ね3-4ヶ月毎に注射を繰り返す必要があります。けいれんの再発と注射を繰り返していくとやがて顔面神経がマヒして、顔の表情がつくれなくなったり、口からよだれが自然に流れ出てきたりする場合があります。対症療法であり、その効果は一時的ですが、手術をしないでよいとう利点があります。

3. 外科的治療(微小血管減圧術)

唯一の根治的治療法です。

顔面けいれんは主に血管(後下小脳動脈、前下小脳動脈、椎骨動脈など)による顔面神経への圧迫が原因であるため、この圧迫を解除するとけいれんは治まります。

耳の後に小さな開頭を行い、手術顕微鏡を用いて観察し、圧迫している血管を神経から離して再び血管が神経を圧迫しないように固定します(Transposition)。手術はABR(聴性脳幹反応)やSEP(体性感覚誘発電位)などの術中神経モニタリング下に行うことで安全性を高めています。

また顔面けいれんに伴って発生する顔面神経の異常筋電(AMR)をモニタリングし、責任血管の移動、圧迫の解除によって、AMRが消失したことを確認し、確実な手術を実践しています。手術によって概ね90%程度の患者さんの症状(顔面けいれん)が消失もしくは改善します。
術後けいれんが消失する患者さんのうち約70%の患者さんでは術後直ぐに止まりますが、約30%の患者さんでは消失するまで1年ぐらいかかる場合があります。

手術所見(右顔面痙攣)
  • MRI画像と同様に責任血管(AICA-PICA:黄矢印)がREZで(黒矢印)圧している事が確認できます。
  • 責任血管(黄矢印)を除けると、顔面神経には血管に圧迫された圧痕がついていました(黒矢印)。
  • REZより腹側の脳幹との間に、フィブリンのり(組織接着剤)を塗布したサージセル(セルロース製の吸収性クッション)(赤矢印)を介在させて固定することにより、REZ部分と責任血管との間に隙を設けて除圧しています。