慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫とは
慢性硬膜下血腫は、比較的軽微な頭部外傷、2週間から3ヶ月程度の時期に、頭蓋骨直下にある脳を覆う硬膜と脳との間隙(硬膜下腔)に緩徐に血液(血腫)が貯留する疾患です。高齢男性に多く見られるとされていますが(男女比7:3)、若年女性や頭部外傷歴がない人にも発症する場合もあります。
脳と硬膜を橋渡しする血管(橋静脈)の破綻などにより、脳表の髄液と混ざった血液成分が硬膜下に二層構造(外膜と内膜)の被膜を形成し血腫として成長するとされています。
症状について
外傷後数週間は無症候性のことが多いですが、血腫が徐々に増大するに従い、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気嘔吐など)、片側の麻痺(片麻痺)、しびれ、歩行障害、失語、認知機能低下(または短期間での進行)、意欲や活動性の低下などが生じます。
慢性硬膜下血腫の診断について
年齢、生活歴、病歴、症状などから慢性硬膜下血腫が疑われた場合、まずは頭部CT画像検査を行うことが一般的です。頭部CT画像では慢性硬膜下血腫は頭蓋骨と脳の間に、三日月状に描出されます。両側発症もめずらしくありません。
- <片側性>
- <両側性>
慢性硬膜下血腫の治療について
血腫のサイズが比較的小さく症状が軽いものであれば自然治癒する場合や内服薬にて経過を見る場合もありますが、経過で血腫が増大してくるものや血腫のサイズが大きく神経症状をきたしているような場合には、外科的治療が必要になります。
外科的治療としては穿頭ドレナージ術があり、ドレナージに加えて血腫腔内の洗浄を追加する場合もあります。手術室で局所麻酔下に、頭蓋骨に小さな穴(穿頭孔)を開け、その穴からシリコン製のドレナージチューブを挿入して血腫を排出させ、場合によっては血腫腔の洗浄を行います。
術後は半日から1日程度、ドレナージチューブを留置した状態で管理を行い十分に減圧されていることを確認してチューブを抜去し、経過に問題なければ入院後約1週間で退院可能となります。
また多房性で難治性の症例などでは内視鏡を使用した穿頭血腫洗浄術を行う場合もあり、石灰化した慢性硬膜下血腫や難治性再発性の慢性硬膜下血腫などの特殊な症例では開頭術を要する場合もあります。
手術症例
右片麻痺にて発症した左慢性硬膜下血腫
- 術前CTで左側に脳を圧迫する慢性硬膜下血腫を認めます。
- 術後CTでは穿頭孔から血腫が除去され、脳が減圧されています。