血液・腫瘍内科
特色
血液・腫瘍内科は2016年4月より新設となりました。
当科は、白血球・赤血球・血小板の増加や減少など血球成分の異常、リンパ節や臓器のリンパ組織の腫れによる異常、あるいは血液に含まれる免疫グロブリンの異常などに代表される造血器やリンパ組織の病気を対象とする診療科です。
具体的には、急性・慢性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、などの悪性疾患と、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血などの疾患が代表的です。
主要疾患
代表的な対象血液疾患:
➀悪性リンパ腫
腫瘍化したリンパ球がリンパ節や諸臓器のリンパ組織を中心に増殖する疾患で、主に生検組織の病理診断にて診断が確定します。悪性リンパ腫には多くのsubtypeが含まれそれぞれ治療方針が異なりますので、通常のHE染色のほか各種免疫組織染色、flow cytometry、FISHなどの遺伝子レベルでの検査を行い正確に診断することが重要です。特に後2者は事後で追加することが困難なため、私どもは悪性リンパ腫が疑われる症例には生検時より参加させていただき診断を進めるように努めています。悪性リンパ腫はまずは化学療法で治療を行うことになりますが、抗がん剤の選択に関してもsubtypeを含め個々の症例の情報を総合的に検討して決定するように心がけています。
➁多発性骨髄腫
本来骨髄にあり、多彩な免疫グロブリンを産生している形質細胞が腫瘍化した疾患です。比較的高齢の方に多く、免疫グロブリンの増加以外に、原因不明の貧血や病的骨折、腎機能障害、高カルシウム血症などが発端になり診断されることも少なくありません。近年、新規薬剤と総称されるボルテゾミブやレナリドマイドが登場し優れた治療効果が得られるようになり、治療戦略が一新されつつあります。
➂慢性骨髄性白血病
健康診断やたまたまの血液検査で白血球増加を指摘され診断の発端になることが多い疾患です。Ph染色体の本体であるBCR-ABLキメラ遺伝子の出現が白血病化の原因であることが明らかにされ、その遺伝子異常を標的に創薬されたイマチニブの登場により治療戦略が劇的な変化を遂げました。外来通院での診断や治療導入が可能で、最近ではさらに治療効果を高めた第二世代の薬剤も登場しております。
➃本態性血小板減少性紫斑病
紫斑や点状出血などの出血症状が発端となり、血液検査で血小板のみの減少を認める代表的な疾患です。血小板に対する自己抗体が生じ、自己免疫的に血小板が破壊されるため血小板の減少が生じます。近年、ヘリコバクター感染が発病に関連していることが判明し、まずピロリ-菌陽性者では除菌療法を試みます。急性期やピロリ-菌陰性の場合で特に血小板数3万以下に低下を認める時は、入院の上ステロイドホルモンなどの治療の適応を検討することとなります。
血液内科は、新しいお薬やその投与法など進歩が著しい領域でありますが、常に国際レベルのエビデンスに基づく治療を行うことを信条としております。 長期間に及ぶことの多い治療でも、入院期間をできるだけ短くし早期に外来通院に戻っていただき、より負担の少ない治療を入院と変わらず安全にしかも効果的に受けていただけるよう心がけています。
主要検査
- 骨髄穿刺、骨髄生検、FCMやFISH、染色体分析、遺伝子学的検査を用いた血液悪性腫瘍の診断
診療実績
外来診療:平成29年1月1日から12月31日までの集計で、院外からの初診患者数は29名に対して、他科よりの院内紹介は186名で、合計215名の初診患者数がありました。疾患内訳を図1に提示します。当科の特徴として、悪性リンパ腫およびその疑いを含む関連症例が特に多いことがあげられます。
入院診療:平成29年1月1日から12月31日までの集計で、新入院患者数が50名ありました。新規入院患者の内訳を図2に提示します。
中でも悪性リンパ腫が30名と最多でした。
図1 平成29年 初診患者内訳
疾患名 | 悪性リンパ腫 | 骨髄異形成症候群 | 多発性骨髄腫 | 特発性血小板減少性紫斑病 | 急性白血病 | 骨髄増殖性疾患 | 再生不良性貧血 | 慢性リンパ性白血病 | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
患者数 | 61 | 24 | 17 | 10 | 5 | 4 | 3 | 2 | 20 |
図2 平成28年 新規入院患者数の内訳
診断 | 悪性リンパ腫 | 多発性骨髄腫 | 特発性血小板減少性紫斑病 | 急性骨髄性白血病 | 慢性骨髄性白血病 | 自己免疫性溶血性貧血 | 赤芽球ろう | その他 | 計 |
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件数 | 30 | 4 | 4 | 2 | 2 | 1 | 1 | 6 | 50 |
学会認定
日本血液学会認定施設
スタッフ
写真 | 職名 | 医師名 | 専門分野 | 学会認定など |
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主任 部長 |
中川 雅史 (なかがわ まさし) |
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外来診察日: 火曜 午前・午後、金曜 午後 ➀番外来
写真 | 職名 | 医師名 | 専門分野 | 学会認定など |
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![]() |
副部長 | 石河 純 (いしこ じゅん) |
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外来診察日: 水曜 午後 ➀番外来
受診科からのお知らせ
当診療科は現在専門医2名体制での診療となっておりますが、病院の規模に比較して、人員や割り当て外来診察枠・病床数はまだまだ不足している現状です。従いまして、入院を必要とする患者様で特に、末梢血に芽球が認められる、あるいは急激に血小板数の減少や白血球数が増加を認める場合など急性白血病や骨髄異形成症候群が疑われる患者様は、近隣の無菌治療室を完備された血液内科もご検討いただきますようお願い申し上げます。
➀院内の他の診療科を通して紹介いただく症例を中心に、血液疾患の診断・治療をサポートして参ります。
➁その中でも、悪性リンパ腫と多発性骨髄腫に関しては、出来るだけ当院で治療を受けていただけるように努力してまいります。
➂入院を必要としない慢性骨髄性白血病、真性多血症、本態性血小板血症などの慢性に経過する骨髄増殖性疾患に関しては外来で対応させていただきます。
➃一般病床での入院が可能な特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血などの良性疾患に関しては、出来るだけ随時対応させていただきます。