患者のみなさまへ
インフォームドコンセント
- インフォームド・コンセントについて
当センターでは、基本方針の一つに「安全・安心で質の高い全人的医療の実施」を掲げています。また、医療における究極の目的は、患者さんの生活と人生の質の確保と向上です。
これらを達成するためには、医療の受け手である患者さんの意志が常に尊重され、患者さんと医療従事者の十分なコミュニケーションの確保が前提となります。
インフォームド・コンセントは、医療従事者が患者さんに必要な診療情報を提供し、十分な理解が得られた上で患者さん自らの意志による選択に基づき、医療従事者と方針の合意をもって成立します。ただし、医療従事者が説明をしたつもりであっても、患者さん側に十分な理解がなければインフォームド・コンセントは成立しません。説明文書の交付をするなど、理解を得られるよう懇切丁寧な情報提供に努めることが重要です。また、患者さんが「知らないでいたい希望」を表明する場合にはこれを尊重しなければなりません。
- 対象
検査・処置・手術などの侵襲的な行為や重い副作用の可能性がある注射・処方・与薬など、予後に大きな影響を与える医療行為については、特に個別性を考慮した必要性と危険性について十分に説明を行います。また、入院中の診療・リハビリ計画や退院にむけた指導など、患者さんやご家族の参加が重要な事項に関しても、インフォームド・コンセントを重視します。
- 説明者となる医療従事者
- 説明は原則として主治医または担当医、担当職員が行い担当看護師も基準に基づき同席します。場合によっては当直医など他の医師や他の職員が説明を行います。
- 研修医が説明する場合は、原則として指導医が同席します。
- 医療従事者間での共通認識の確保
- 医療チームにおける役割分担と説明における同一性を確保します。
- 共有すべき情報の内容および場所や時間について、予め医療従事者間で合意しておくよう努めます。
- 重要な説明の段階では関係する他の医療従事者が同席するよう努めます。
- 説明や合意形成は可能な限り文書を用いて行い、説明内容や患者さんの意向を共有できるよう努めます。
- 患者さんの意向を医療従事者間で共有するため、情報管理の工夫を行います。
- 疾患別、治療別の患者さん・ご家族のための説明資料、クリニカルパスの作成、普及に務めます。
- 患者さん・ご家族の不安な思いや不明なこと、戸惑い、希望など多くの反応に対し関係職種が情報を共有し、必要なケアを行います。
- 患者さんに意思決定能力があるかどうかの判断は、カンファレンス等で集団的な検討をもって行います。
- 患者さん・ご家族との話し合い
- 患者さんと医療従事者のより良いコミュニケーションの努力
- プライバシーを配慮し、場所等の工夫を行います。
- 患者が質問しやすい雰囲気作りを心がけます。
- 患者の年齢、理解度、心理状態、家族的社会的な背景を考慮します。
- 初診時には十分な時間を取って説明を行います。
- 医学用語や外来語を用いず、平易な言葉・表現による説明を行います。
- 特に必要な場合は日時や場所を変え、改めて情報提供を行います。
- 当該医療の目的や内容について不必要な恐怖感を取り除くように心がけます。
- 医療従事者から提供すべき診療情報
- 病名・病態
- 目的・必要性・有効性・注意事項
- 合併症・偶発性と、その発生率、発生時の対応
- 代替可能な方法、およびそれに伴う合併症・偶発性と、その発生率
- 当該医療を行わなかった場合に予想される経過
- 同意の撤回が出来ること
- 質問、同意を撤回する時の連絡先
- 患者さん・ご家族へのお願い
治療を行う上で、ご自身で心がけていただくことや、ご家族等とのお話合いをしておかれることが大切になります。
- 日頃から心身両面の健康や医療について関心を持ち、知識を豊かにしておくこと
- 病気になった時どのような医療を受け、どのような生き方を選ぶかについて、日頃からご自分の意志を持つとともに、ご家族と話し合うこと
- 自らの病状や予後、検査の目的・内容・結果・治療の目的・期待される効果・副作用について遠慮なく医療従事者に尋ねる態度を身につけること
- 平素のヘルスケアを担当するかかりつけ医を持つこと
- 治療の説明を受ける場合は、患者さん一人では説明を受けないようにご家族や信頼のおけるご友人等に同席してもらい、説明の内容を理解し精神的なサポート等が受けられる体制をつくること
- 積極的に病気の治療に参加し、身体の異常を速やかに医療者に伝えること
- 看護師等、他の医療従事者の同席に関する基準および記録について
- 目的
手術等についての説明が医師からなされた時、患者さんは緊張のあまり、その場での説明を十分に理解することができないこともあります。このような時には、看護師等にご相談ください。看護師等には、「患者さんの代弁者」「患者さんの弁護」「患者さん相談窓口」などアドボカシー(権利擁護)の役割があります。
- 同席基準
原則として、以下の場面においては可能な限り同席するよう努めます。
- 入院決定時
- 告知(特に予後不良の病名の場合)
- 急変または病状悪化時、終末期の治療等の意思決定時
- 侵襲的な治療・検査・処置を行う場合の説明時
- 侵襲的な治療・検査・処置終了後の結果および今後の治療計画の説明時
- 退院後の療養の場や治療の継続に関する説明時
- 代理人等がいない場合
- 意思を表明できない、意識障害などで判断不可能な場合
- 記録について
同席した者は、「説明内容の補足」「患者さん・ご家族の反応」等を診療録または看護記録等に記載し、また、その日時と記載者氏名も適切に記録しておくよう努めます。
- インフォームド・コンセントに関する文書
医療従事者は、文書を交付して診療情報の提供を行うと共に、理解を得たうえの合意も同意書として文書を作成しておくよう努めます。
- 文書を用いた情報提供
- 説明文書の作成と交付
手術、麻酔、検査、処置、治療法(院内製剤も含む)などの身体に侵襲を与える医療行為のみならず、治療方針、治療結果についても、患者さんへの説明を行う場合は、必ず説明書および同意書を作成し交付するよう努めます。
- 説明すべき情報に応じた説明文書
診療科内で合意を得た医療行為毎に固有の文書を備えるよう努めます。内視鏡や画像診断をはじめとする多くの検査や、穿刺・ドレナージ・焼灼等の処置、各種化学療法等、複数の診療科にわたって使用するものも多く、その内容は常に標準化されるよう努めます。
- 文書による合意形成(同意)
- 意思決定ができる者の条件
- 原則として、患者さん本人と代理人等の同意を必要とします。患者さんが成人で判断能力がある場合は、患者さん本人の署名だけで実施できます。
- 患者さんが未成年(20歳未満)、あるいは意思を表明できない、意識障害などで判断不可能、医学的に不適当と思われるときは、保護者・保証人・代理人・代諾者、或いは本人意思を推定しえるご家族・ご親族の同意を得ることとします。
- 乳幼児で患者さん本人が明らかに意思表示・署名できない場合はこの限りではありません。
- 代理人等(保護者・保証人・代理人・代諾者・本人意思を推定しえる家族・親族)の条件
- 患者さんの親、子、配偶者、兄弟姉妹、保護者、3親等以内の親族、または、それら近親者に準ずると考えられるものうち、満20歳以上の者
- 患者さんが未成年の場合、親権者または未成年後見人
- 患者さんが指定した代理人。性的マイノリティ当事者のカップル。
- 代理人等がいない場合
- 保護者・保証人・代理人・代諾者・本人意思を推定しえる家族・親族がいない場合は、最善の治療方針を医師または医療・ケアチーム(以下、「医師等」という。)で慎重に判断し、臨床医学倫理委員会の小委員会にて決裁を行います。
- 急を要する患者さんについては、医師は複数人の意見をもとに患者さんにとって最善の治療方針を医師等で慎重に判断しその代表者が署名することとします。
- 未成年(20歳未満の場合)
- 年齢に関係なく、自己判断できても、原則はご家族やご親族に電話連絡を行い、十分な説明を行います。
- ご家族やご親族に電話連絡がつかない場合は前項に準じます。
- 説明および同意を得る頻度
- 既に説明し、同意を得ている場合でも、患者さんが再度説明を希望する場合、また、患者さんの容態に応じて治療方針を変更する必要がある場合には、適宜その都度説明を行い、同意を得ることとします。
- 繰り返し行われる検査・治療でも、その都度同意書をもらうことを原則とします。ただし、複数回の検査・治療の予定日が同意書に明記されていれば有効とします。
- 同意の撤回
- 同意を行った者は、一旦、医療行為について同意した後でも、同意を撤回することができます。
- 同意の撤回は、同意撤回文書の受け取りによって行います。
- なお、この文書を電子カルテ内に保存するとともに、医師等は必ず同意の撤回があった事実、経緯および同意の撤回を知った日時を診療録に記載します。
- 署名または記名押印について
- 署名が直筆の場合は、押印は不要とします。
- 記名(印字、代筆、スタンプ等)の場合は、押印を必要とします。
押印が得られない場合は第三者の立会いをもって押印に代えるものとします。
- 患者さんが同意の意思を表明しているが署名することが困難な場合は、保護者・保証人・代理人・代諾者が代筆し、患者さんの署名に代えることができるものとします。
- 代理人等による同意の場合は、本人名、署名者名を併記することとします。
- 説明者または同意者の署名漏れは、適切な同意が得られていないものとして見なされます。
- セカンドオピニオンの保証
十分な説明を行っても患者さんやご家族が十分に理解しているとは限りません。また、医療従事者が示す治療方針に全て納得しているとは限らず、不安を表出できない場合もあるため、他の専門医に相談して意見を聞きたい、セカンドオピニオンを受けたいと希望することができます。この場合には、セカンドオピニオンを担当する医師および医療機関に診療情報を提供しますのでお申し出ください