臨床研究と新薬治験

当科では将来のよりよい治療のために
臨床研究・新薬の治験を実施しています
条件を満たす患者さんには
ご協力をお願いしております

臨床研究実績

現在広く行われている医療行為は、多くの患者さんの協力で実施されてきた臨床研究や治験の結果その有効性が確認された治療に基づくものです。将来のよりよい治療のために患者さんには臨床研究へのご参加をお願いしております。

現在当科で実施している臨床研究は以下の通りです。

[1]全国多施設臨床研究

1.PREDICT試験(林医師は本試験のSteering committeeを務める)
目的:腎性貧血治療薬(NESP)による目標Hb10g/dlとHb12g/dlにおける腎予後の差の比較
2014年6月末症例登録終了。全国74施設で498例が登録され、当科は38例で全国1位。
2.RADIANCE試験(林医師は本試験のSteering committeeを務める)
目的:ESA*低反応性の症例に対し腎性貧血治療薬(MIRCERA)による積極的治療群(Hb11g/dl)とHb維持群で腎予後の差を比較。
2015年12月末症例登録終了。全国121施設で382例が登録され、当科は35例で全国1位。
3.BRIGHTEN(林医師は本試験のSteering committeeを務める)
目的:我が国におけるESA*低反応性患者の頻度と予後の検討
全国168施設で1986例登録され当科は80例で全国2位。

ESA*:赤血球造血刺激因子製剤

[2]国際共同臨床研究

PDOPPS(Peritoneal Dialysis Outcome Practice Pattern Study)
目的:腹膜透析(PD)患者さんの転帰と治療方法についての調査(PDOPPS)は、PDの最適な治療法を確立し、その結果PD患者さんの生存率向上・死亡率低下とQOLを改善させること
我が国では30施設が選定され、患者情報とoutcomeを登録中。

[3]単施設(当院)臨床研究

1. 腹膜透析導入時の腹膜鞘状突起の開存(PPV)とその後の鼠径ヘルニア/陰嚢水腫発症との関連性についての検討
消化器外科との共同研究
2. CKD患者コホ−ト研究:UMIN登録
CKD患者さんにおける腎ならびに生命予後予測因子を探索的に解析する。
症例登録:2015年1月から
3. 腎不全患者の血中尿毒症関連物質と腎機能との関連性についての横断的・縦断的検討
4. 腎不全患者における腎機能と血中hypoxanthine oxidoreductase(XOR)活性さらには心血管イベントや腎予後との関連について検討。
保存期CKD患者さん500例における血中XOR活性を測定し、横断的解析において腎機能とXOR活性との関連、縦断的解析により予後との関連について検討。
5. ステロイド依存性ネフロ−ゼ症候群に対する至適Rituximab療法計画に関するRCT:UMIN登録
難治性ネフロ−ゼ症候群に対して、Rituximabの6か月毎定期投与群とCD19陽性細胞出現時投与群で再発数や寛解維持期間を比較。
6. 糖尿病性腎症に関する臨床研究
(1)腎臓専門医への紹介時病態と予後
(2)腎組織と病態・予後との関連
(3)腎形態と組織・病態予後との関連
7. 透析導入前の保存期管理が透析導入後の長期予後に与える影響についての検討
2006年~2015年に当院で透析導入となった約1000例の患者さんを調査し、透析導入前の管理状況と予後との関連について解析。

新薬治験情報

当科では腎臓病に対する新しいお薬の効き目を確認するための治験を数多く実施しており、腎臓病治療薬に関するほとんどの新薬の治験が当科で実施されております。
治験参加には厳しい基準があり、すべての患者さんが治験に参加することはできませんが、「将来の患者さんのために」、そして自身の「新しい可能性のために」、基準に該当する患者さんへのご協力をお願いしております。

現在実施中の治験は以下の通りです。

糖尿病性腎臓病に対する新薬

  • (1)糖尿病性腎臓病に対する腎機能改善薬

    この新薬を内服すると腎機能が少し改善する可能性があります。その結果、透析を避けるあるいは遅らせることが期待されています。

  • (2)糖尿病性腎臓病に対する腎機能保護薬

    この新薬を内服すると腎機能低下が少し緩やかになる可能性があります。その結果、透析を避けるあるいは遅らせることが期待されています。

わが国では、毎年約4万人近い患者さんが新たに透析を始めています。そのうち約44%が糖尿病から腎臓が悪くなった患者さん(糖尿病性腎臓病)であり、対策は待ったなしの状況となっています。

糖尿病性腎臓病は比較的進行が速い場合が多いのですが、早期であれば腎機能を改善させたり、腎機能低下を抑えることができます。

これらの新薬も腎機能低下が進行してしまってからでは効果が期待できません。当科に初診をされる糖尿病性腎臓病の患者さんの腎機能はすでに(100のうち)27%まで低下しており、あっという間に透析が必要な状態になってしまう患者さんも多くみられます。

このような新薬の恩恵を受けるためにも、また糖尿病から透析になるのを避けるためにも、糖尿病の患者さんで尿蛋白や腎機能低下を指摘された場合は直ちに腎臓専門医を受診して下さい。

慢性腎臓病に対する新薬

  • (1)慢性腎臓病に対する腎機能保護薬

    腎臓病は腎臓にある濾過装置(糸球体といいます)が次々に壊れていく病気です。残った濾過装置は壊れた濾過装置の分も頑張って濾過をしようとするため、無理をして濾過圧を上げてたくさんの老廃物を出しています。

    ところが、濾過圧を上げた状態が続くと、濾過装置が自ら壊れてしまいます(フィルターに過剰な圧がかかるとフィルターが破れてしまいます)。そこで、腎臓病の進行を抑えるためには、お薬や食事療法によりこの濾過装置の濾過圧を下げる治療が行われます。この新薬はこの濾過圧を下げる効果が期待されています。

  • (2)経口腎性貧血治療薬

    腎臓からは、骨髄での赤血球の産生を刺激する造血ホルモン(エリスロポエチン)が分泌されています。例えば手術や事故などで大量に出血した場合、腎臓から速やかに大量のエリスロポエチンが分泌され、骨髄での赤血球の産生を促進させ、貧血を改善させます。

    腎機能が低下すると、エリスロポエチンの分泌が低下するため、ほとんどの患者さんが貧血になります(腎性貧血と呼びます)。貧血を放置すると、脳·心臓·腎臓など様々な臓器の機能が低下するため、腎機能低下も加速します。したがって、慢性腎臓病の患者さんにとって、腎性貧血の治療は非常に重要です。

    腎性貧血の治療には1990年よりエリスロポエチン製剤が使用されていますが、定期的(多くは1~4週毎)な注射が必要です。この新薬は内服することで、エリスロポエチンの分泌量が増加し、貧血を改善させることが期待されています。

これらの新薬を試してみたいと思われたなら、ぜひ腎臓·高血圧外来を受診して下さい。他院通院中の患者さんは必ず診療情報提供書(紹介状)を持参してください。