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病院紹介

先輩産婦人科医に聞く

荻田和秀先生のプロフィール

香川医科大学出身
大阪警察病院、大阪府立母子保健総合医療センター等を経て大阪大学博士課程に進学。現在は泉州広域母子医療センター長兼産婦人科部長

大学時代は調子良くやっていたのですが、進路を考えた時に、何をしていいのかわかりませんでした。ミュージシャンになりたいという気持ちもあったので、オーディションを受けたり、1年くらい足掻いてました。
内科向きではないと感じていたので、当初は脳外科をサブスペシャリティとする救急医を考えていたのですが、臨床実習で周産期に行ったとき、「あ、これは救急だな」と思ったことがきっかけで周産期の道に入りました。
今までを振り返ると、周産期一筋で一環したキャリアに見えますが、きちんとした将来像や理想があったわけではなく、目の前にある研究や患者さんに対して、何とかするということだけ考えて今までやってきました。目の前のことに全て注ぎ込んだら、納得できるだろう、という気持ちですね。10年後どころか、10時間後にどうなってるのかさえ考えずに今までやってきました。

母子センターでの勤務〜研究に

キャリアの転機となったのは、母子センター(大阪府立母子保健総合医療センター)での勤務です。日本の周産期センターでも古い方の施設で、毎日極限状態の母子がやってきました。そこで様々な症例に出会い、その難しさと深さに毎日しびれていました。警察病院での勤務もですが、ここでも割と制約を受けずに仕事をさせていただき、面白さとやりがいを感じました。周産期は麻薬のように医者を魅了して止みません。オーバードーズで命を失う人もいるんじゃないかと思うくらい周産期の怖さ、面白さを感じました。
研究者になりたいという気持ちがあり、後期研修後、博士課程に進学しました。結果として研究者としては花が開かなかったのですが、科学の目を通して物事を判断するという経験を積めて良かったと思っています。周産期は放っておけば医者がいらないお産がほとんどです。だからこそ、少数に試してみてたまたま上手くいった方法を、統計処理なしに万人に共通の真理としてしまうのは間違ってるのではないか、と思うのです。
研究において繰り返し実験をし、文献を読みあさり、色んな人と議論をして、といった経験から、考えるという癖がつきました。研究の日々を通して、当たり前だと思っていたことを当たり前だと思わずに、違った観点からみることができるようになったのではないかと思います。

若いうちにやっておいてほしいこと

一つは留学です。実のあるものであれば二週間でも一ヶ月でも良いと思います。周産期に関して、高度な技術を習得するために留学するのもありですが、周産期死亡率は日本が一番低いのですから、若い人には是非周産期のシステムそのものを見に行き、自分の仕事の立ち位置を確認して欲しいと思います。私もそれを応援したいです。
もう一つは周産期センターでの経験です。極限状態でやっている実感を皮膚感覚で叩き込むことは絶対にプラスになります。夜中に電話かかってきて、手いっぱいで受け入れを断ることが、一番悔しい。患者さんを断ったら眠れないんですよ。そういったセンスが母子センターで培われたんだと思っています。
また、大学の垣根やテリトリーに関係なく、色々な人と関わりを持って欲しいです。僕は今でも母子センターにいたときの仲間とは繋がりがあり、どの病院にどの先生がいるか把握しているため、患者搬送での連携がスムーズです。大阪では患者さんを断るということはあまりなく、周産期死亡率も低い方のベスト5に入っています。大阪は周産期をやっている人の仲が良く、日本の中では一番まとまったシステム構築ができているんじゃないかと思っています。

母体死亡について

今の日本で、出産時の母体死亡数は10万件につき5人くらいとごく少数ではありますが、いつかは誰かがあたります。大学院時代に応援先の病院で当直の手伝いをしていた時に、一度経験しました。今でも輸血のポンピングをしている夢を見ます。その経験が今の自分にとってプラスに働いてるかマイナスに働いてるかはわかりませんが、夢に見るくらいだから、自分の中ではよっぽど大きな出来事だったんだろうと思います。経験しろとは言いませんが、後輩には「後ろで必ずついているから、絶対に逃げるな。現場で前面に立て。その雰囲気を感じろ。」と言っています。自分でも、もう一度遭遇したら正気ではいられないかもしれないと思いながら続けていますが、もし、あのとき逃げていたらそれこそ正気でいられなかったとも思っています。
私たちは何も起こらないのが当然、と思われるなかで仕事をしています。基本的に医者がいらない科ですが、必要な時に医者の値打ちがでる科だと思っています。

将来の夢

10年後も、10時間先のことを考えずに仕事を続けられたら良いなぁと思っています。動くときは全力で必死にやってるから、納得いって深い眠りにつけています。10年後も夢を見ないくらい熟睡できたら良いですね。今でも救急など他科に協力してもらってますが、精神疾患を持った患者さん、内科疾患、合併症などに対応でき、内科とか外科とか様々なスペシャリティをもった先生が救急外来をやってるような、Omnipotent(全能性)な絶対に断らない施設ができると良いなと思います。そういった病院ができたら、10年先のことを考えずに済みますよね。

メッセージ

最初の何年間かは馬鹿にならないと身体にしみ込んで来ないと思います。医者が分娩時に不要な手出しをしてしまうのは、不安な時。医療介入が必要でないということを、知識や経験として自分に納得させられるようになったら一人前なんじゃないかな、と思います。
色々な経験をしてください。
絶対に思い通りにはいかないけれど、なるようになります。
その過程を楽しんで欲しいですね。

周産期の現場が漫画に

担当した患者さんの旦那さんが、漫画家デビューし、産科医を主人公にした漫画を描かれています。週刊モーニングで連載されている「コウノドリ」という漫画で、周産期の現場がリアルに描かれています。
こんなことがあるとは全く想像していませんでした。不思議な縁ってあるものですね。

荻田先生のキャリアグラフ